水産資源解析の勉強法

ここでは、管理人がおこなった水産資源解析学の勉強方法と、おすすめ書籍の紹介をします。

水産資源解析を勉強しよう!

魚が何を食べているかとか、どれくらいたくさん子供を産むかを調査したり、魚の年齢や寿命を調べたり、どこに生息しているのかを研究している人たちはたくさんいます。

魚の生態を調べる基礎研究はとても重要です。
すぐに成果が出ないこともありますが、長く継続して行われる必要があるように思います。
基礎研究をやっている方は、ぜひ頑張ってください。

しかし、基礎ばっかりやっていても、実社会の役に立つことはありません。
「この魚の年齢が分かりました!」
って報告を聞いても、「だからなに?」としか(一般の人には)思えませんよね。

そういった基礎研究の成果を、実社会の役に立つ数値(漁獲すべき量とか)に変換する学問こそが水産資源解析学です。

水産資源解析学でやることは大きく分けて二つあります。1つは魚の数を数えることです。もう一つは、乱獲に陥らない程度にたくさん魚を獲ってたくさん儲けることができる、そんな漁獲尾数を計算することです(もちろんほかにもたくさんありますが)。

うちのサイトでも計算例が載っているので、ぜひご覧になってください。

あと、どうでもいいかもしれませんが、水産資源解析学の考え方はビジネスにおいても応用できる箇所はとても多いと思います。OR(オペレーションズリサーチ)を水産分野に適用するための学問みたいなものですから。
教養としてでも学んでおくと、良いことがあるかもしれません。

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数学はお好き?

ところで、水産学部に来られる方で数学が得意な方はあまり多くないように感じています。
私自身も数学が得意ではなく、水産資源解析のいろいろな公式をみて、大変困った記憶があります。

でも、「基礎研究の知見を、実社会の役に立つ数値(漁獲すべき量とか)に変換する」ためには、どうしても数学の知識が必要です。数値を扱う以上、当然ですね。

そこでこのページでは、なるべく無理なく数学の基礎をおさえつつ、水産資源解析へとたどり着くための道順を書きます。
このページに書かれたとおりに勉強する必要はないですが、ひとつの例として参考になれば幸いです。

なお、(当然ですが)数学が得意な方は、このページに書かれた勉強方法を取る必要はみじんもありません。Modelling and Quantitative Methods in Fisheries, Second Editionから始めるのが良いと思います。

 

微分と積分の基礎をおさえよう

水産資源解析の勉強方法ですが、最初から水産資源学の本を読むのはお勧めできません。数式が無意味に難しいので。特に「水産資源解析」と銘打った本で分かり易い本はあまりないので是非読まないでください。
特に「入門」や「基礎」と銘打った薄い本は読むと資源解析が嫌いになる可能性が高いように思われます(あくまでも管理人の主観です)。薄い本だからすぐ読めるだろうと思うと痛い目を見るかもしれません。
とにかく、水産資源解析を嫌いになっていただきたくないので、慎重に行きます。

最初は微分積分、そして何よりも微分方程式の勉強から始めるのがよいでしょう。
微分方程式って名前は難しいんですが、微分積分の基礎を「日本語で」イメージできるようになれば簡単に理解できます。
微分方程式に限らず数学は「いかに数式を日本語に訳すか」を意識して勉強してください。どれだけ数式を展開できたって、その意味を「日本語で」説明できなければはっきり言って無意味です。ここは数学系の研究分野との大きな違いでしょう。
微分方程式を日本語で説明できるようになれば水産資源解析の力学系モデルもちゃんと日本語に翻訳できるようになるはずです。多分。

微分と積分の基礎をおさらいするのにおすすめの本を紹介します。


微積分のはなし〈上〉ー変化と結果を知るテクニック



微積分のはなし〈下〉―変化と結果を知るテクニック


上下巻ありますが、とても読みやすいのであまり時間はかからないと思います。

数学が苦手でも、入試に受かって大学に入学できた人ならば多分大丈夫です。一冊につき1週間、2冊で2週間をめどに頑張って読んでみてください。
この本は、突然微分方程式に行くのではなく、微積分の基礎から微分方程式まで全部書いてくれているのでとっつきやすいです。下巻の最後の方のラプラス変換や微分の上級コース以上のことは水産資源解析の教科書を読み進めるにあたって普通使わないのでスルーしてもよいですし、上巻の内容でも難しいところは読み飛ばしながら進めていってもかまわないと思います。まずは全体の流れをつかんでください。

 

水産資源学の基礎と計算方法を勉強しよう

ここからが本命ですね。水産資源解析の基礎を学びましょう。

微分方程式を理解できたあとに北大の授業の教科書にもなっていた以下の本を読みましょう。


水産資源学

↑のリンクは古本だけですか、オンデマンド出版でなら(少しお高いですが)新品が買えます。

オンデマンド版 水産資源学

序章と1章は果てしなくだるいので軽く読み飛ばしてください。水産学を志した人ならば、読まなくてもわかります。
1章2節の水産資源の組成はとても大事な用語がたくさん出てくるので用語は覚えたほうがいいですが、数式ははっきり言ってどうでもよいです。χ2検定は別の統計入門書を読んで勉強したほうが分かり易い(というか、この本の説明だけで理解するのはふつう無理)のでぜひスルーしましょう。

2章の2節「成長曲線」からが本番です。あなたの大好きな微分方程式の式展開がずらずら書かれています。この本のすごいところは式展開をほとんど省かずにきちんと書いてくれているところですね。式展開についていけるよう頑張ってください。ただし、ワルフォードの定差図は今は使われないので無視して結構です。また2.2.5の成長曲線の一般式は数式がちょっと複雑なので分かんなくても悲しまなくて結構です。

3章の余剰生産モデルはペラ・トムリンソン以外は楽勝なので頑張って読んでください。MSYの意味を数式を使ってはっきり理解できるようになってください。

4章の成長生残モデルは、「e」の意味を死ぬ気で理解してください。減少係数(Mとか)の意味が分からないと未来永劫水産資源解析(と個体群生態学)はわかりません。水産資源解析で乱発する「e」というマークは微分方程式を解いたら必然的に出てくる値なんだなと納得し、その背後にある「死に方」の理論を理解できれば及第点だと思います。
毎日一定の数で死ぬのではなく、毎日一定の「割合」で死ぬからeなんてものが出てくるんですね。生き物の個体数の変化の数式は、ぜひとも理解しておいてください。

6章の標識放流はやや難しいですが、微分と積分さえわかっていればこの本を最後まで読み切ることは十分に可能です。自分のペースで数式を展開しつつゆっくり通読してください。私は2か月くらいかかりました。

 

水産資源解析に詳しくなろう

最後におすすめする本はこちらです。


Modelling and Quantitative Methods in Fisheries, Second Edition

この本は、とても有名で、いろいろな解析手法が載っており、なんとExcelでの計算例までついているという素晴らしい本なのですが、一つ欠点があります。
英語で書かれていることです。

英語で書かれていることを欠点と言ってしまうと怒られるのですが、「水産資源解析を嫌いにならない」で勉強することをこのページでは目的としているので、ハードルは低いほうが嬉しいです。
そして、英語は明らかにハードルを上げてくれています。
英語の勉強だと思って、Yahoo翻訳を駆使しつつ頑張って読みましょう。
ただし、数式は(レベルの高い解析手法である割には)優しく丁寧に書いてくださっています。

この本は有名なので、解説サイトもあります。

水産データの解析に関する自習室

上記のサイト様は本書をRで計算した例をUPされています。こういったサイト様を活用すれば、分厚い英語の本を読むハードルも少しは低くなるのではないでしょうか。

 

その他

お金を使わず、ネットで水産資源解析の資料を読みたいならば、以下のサイト様がお勧めです。

水産資源解析マニュアル

また、当サイトにもRでの計算例が少しは載っているので、良ければ参考になさってください。

魚の話

 

水産資源解析って、理解できればとても面白いです。
無理せず楽して、解析を勉強なさってください。

 

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